SSブログ

労働時間規制緩和 [労働時間]

 厚生労働省は、働いた時間ではなく「成果」で賃金を決める新制度の骨格をまとめたところである。年収や職種を限定して、労働時間の規制を外す仕組みだけれども「残業代ゼロ」の働き方が拡大する懸念が否定できないと危惧する。それ以前に、長時間労働の抑制が進んでいないのが問題であることは忘れてはいけない。
 厚労省は新制度を「高度プロフェッショナル労働制」と名付けたのである。労働政策審議会の分科会に提示した労働時間の規制緩和の骨子案によるならば、新制度の対象は年収1075万円以上で、金融商品のディーリングや研究開発など高度の専門職に限るとしている。対象者の同意を前提として「業務の範囲を明確」に定めた書面を経営側と交わすのである。
 労働基準法によれば、労働者が1日8時間・週40時間を超えて働いたり、深夜・休日勤務をしたりした場合には、割増賃金の支払いを企業に義務付けているけれども、新制度において働く人にはこの規制が適用されないのである。「ホワイトカラー・エグゼンプション」とも呼ばれている。
 政府は新制度の導入を盛り込んだ労基法改正案を26日に召集される通常国会に提出する方針ではあるが、「労働側」は対象となる人が過重な働き方を強いられるなどとして強く反発しているのである。当面、労使間、与野党間の綱引きが続きそうな状態である。
 新制度は安倍政権が進める雇用改革の柱である。骨子案では、時間に縛られず自由な働き方をしたい人のニーズに応えるのが狙いであり、労働生産の向上が図れるとしている訳である。
 新制度の理念は理解できないというわけではない。確かに短い時間で成果を挙げられる人には便利な制度と言えるかもしれない。うまく運用されれば働き過ぎを防げるという見方もあるかもしれない。しかし、長時間労働による「過労死」が発生して、「残業代が横行」している現状を見るならば、そう楽観的ではいられない。
 骨子案によると、企業側に労働者の健康を確保するための措置を義務付けて、年104日間以上の休日を与えることなどを求めているが、やや具体性に乏しく、更にどこまで実効性があるかは疑問と言える。
 最も懸念されているのが、新制度の対象が拡大されることである。年収の要件は「1075万円以上」としているけれども、第1次安倍政権で同様の制度が提案された際には、経団連は「400万円以上」とするよう求めたのである。
 分科会でも、経営側委員が「1千万円以上」に引き下げるよう主張して、労働側委員が「年収要件に合理的な根拠はない。すでに値切り交渉のようだ」と反論する場面があったのである。新制度が導入されたら年収要件を引き下げたいのが、経営側の本音をみられても仕方がないと言ってよいであろう。
 雇用・労働の規制緩和では、順番が重要であることは言うまでもない。新制度の議論は、長時間労働の抑制などを先行させて、十分な成果が挙がってからにするべきであろう。今の進め方では、働く人の納得は得られないのではないかと思われるのである。





nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。