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欧州の量的緩和 [国外]

 欧州中央銀行(ECB)が、国債などを大量に購入することによって金融市場へお金を流し込む「量的金融緩和の導入」を決めた。景気の足取りが弱い上に、更に物価が下がり続けるデフレへ陥る恐れがあるからだと説明している。今年3月から始めて当面2016年9月まで続ける予定ということである。
 量的緩和はこれまでに米英や日本が先行していて、これにユーロ圏も続くことになったのである。ECBは昨年6月と9月の2回利下げに踏み切ったほかに、銀行の企業向け融資を支援する資金供給などを実施してきたけれども、景気押し上げの効果が芳しくなかったにである。
 しかしながら、追加緩和で直ぐに問題が解決するというものでもない。ユーロ圏の景気低迷は一部加盟国の構造改革の遅れに加えて、対ロシア関係の悪化などが重なったためであり、最近の物価低迷は原油価格の急落によるものである。ユーロ安による輸出伸長は多少あるとはいえるだろうが、量的緩和の経済全体への効果は限定的とみた方が適切だと思う。
 「欧州の盟主」ドイツは同様の認識から、量的緩和はかえって改革機運をそぐとして反対してきたのである。この亀裂を修復し、今後も域内の政策調和を保つことが大切でもある。
 ユーロ圏経済の大きな課題は、依然としてフランスやイタリアの構造改革にあると言ってよいであろう。ユーロ加盟条件である財政赤字の削減が後手に回って政策手段に制約がある上に、民間活力を増す労働市場などが進んでいないからである。金融政策の効果を高めるためにも改革を怠らないでもらいたいと思う。
 08年秋のリーマン・ショックに象徴される金融危機から6年余り経った。米国経済が成長軌道に戻り昨年秋で量的緩和を終えたのと対照的に、欧州の不振があらためて浮き彫りになっている現状である。国際通貨基金(IMF)は今月、ユーロ圏の15年の成長見通しを1.2ポイント引き下げたばかりである。
 昨年半ば以降、伸び悩みが特に目立つのが輸出である。中国向けが同国の成長鈍化で振るわないところへ、ウクライナ危機をめぐる制裁措置により対ロ貿易の縮小が重なったことが響いている訳である。ウクライナ問題におけるロシアの強硬姿勢に変化は依然としてなく、制裁緩和の見通しは立っていない減所である。
 量的緩和の景気効果は限定的と見込まれるものの、金利や外国為替相場を通じた影響は日本をはじめ世界へ及ぶ可能性もあって注意が必要である。景気回復で利上げを検討中の米国と金融政策の方向が逆になるためで、ユーロ下落の一方、円高が進む局面も出てくると言える。
 ここで釘を刺しておきたいのは、円が上昇したからと日銀も追加の金融緩和をすることである。日銀は昨年10月に脱デフレを確実にするとして突如、追加緩和を決めたけれども、その後の原油安で「2年で物価上昇2%」の目標達成はほぼ絶望的な状態である。頼みの綱は円安による輸出物価の上昇だけと言っていい状況であるからだ。だが今以上の円安は弊害が大き過ぎる。「通貨安競争」をすべきでないのである。






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