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春闘スタート [春闘]

 経団連は、賃金を底上げするというベースアップ(ベア)を「選択肢の一つ」と明示した今年の春闘指針をまとめたばかりである。労働組合を代表する連合はこれに先立って、2%以上のベアを要求するという闘争方針を決定していて2015年春闘が事実上スタートしたである。
 円安をはじめ米国の景気回復や法人税減税などで利益が増える状況にある企業がある一方によって、円安が逆にコスト増となっている会社もあり交渉の経営環境にはばらつきがあるというのが現状である。
 しかし肝心なことは、しっかりと利益が出ている企業がそれを従業員と分かち合って賃金として還元することにあるのは言うまでもない。最近の潮流で株主への還元ばかりが重視されがちだけれども、社会の一員である従業員の懐を潤すということは、回り回って企業自身のためになることをこの機会に再認識してほしいと思う。
 この点において、「経営側の大局観の欠如」を強く感じざるを得なかったのが、昨年の春闘であったのである。
 円安の追い風の中、安倍晋三首相が政労使会議で賃上げを迫るという異例の「官製春闘」となったけれども、何よりも注目点は4月からの消費税増税を織り込んだ上での賃上げ水準にあったというのが事実である。
 8%へ17年ぶりに消費税を引き上げることが既に決まっていて、4月からほとんどの物やサービスの価値が増税の3%分上がるのが分かっていたということである。円安による輸入原材料の値上げも重なり、それなりの賃上げがなければ、4月以降の物価上昇に追いつかないことは自明だった訳である。
 だが結果はどうであろうか。連合によると賃上げ率は15年ぶりの高水準でありながら、平均2.07%にとどまったのである。このうち1.5%程度はいわゆる定期昇給分であり、ベアに相当する分はわずか0.5%程度にすぎなかったのである。
 そこから先の4月以降に日本経済において、とりわけ個人消費の現場に何が起きたかをあらためて記す必要はないであろう。実質賃金が減り続けたため2四半期連続のマイナス成長に陥って、社会保障財源のため不可欠とされた消費税10%への再増税が延期されたのであることは記憶に新しい。
 交渉の中心は賃上げにあるとしても、春闘は「働くこと」にまつわる幅広い課題を労使が膝詰めで話せる格好の機会ということが言える。その中心で、とりわけ早急な改善を望みたいのが非正規雇用の問題である。
 パートや契約社員など非正規で働く人はいまや2千万人と言われている。雇用者の4割近くに達していながら、その処遇は遅々として進んでいないのが現状である。
 非正規拡大の背景にはライフスタイルに合わせた働き方の広がりがあると思われる。しかしやはり大きいのは、企業が人件費削減のため正社員のかわりに非正規を積極的に増やしてきた点は見逃すことは出来ない。
 非正規の賃金底上げや正社員化は一面コスト増かもしれないが、国内の消費力強化につながることは事実である。春闘交渉では、ぜひこのような大きな視点を忘れないでもらいたいと願って止まない。





タグ:春闘
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ギリシャ総選挙 [国外]

 欧州金融危機の震源地となってきたギリシャで総選挙が行われ、緊縮策に反対する野党である急進左派連合が大勝したばかりである。同党を中心とするユーロ圏初の「反緊縮」政権が成立するのが確実となった。欧州連合(EU)や有力支援国はギリシャに対して改革の堅持を求めるけれども、次期政権との交渉が不調に終われば「信用不安が再燃しかねない」との懸念が出ているのも事実である。
 EU、各国とギリシャ次期政権には、経済危機と真剣に向き合って、2月末に期限切れを迎えることとなっている金融支援の延長交渉では現実な政治判断を下すよう強く求めたいのである。
 ギリシャの総選挙は2012年5月以降3回目である。急進左派連合が過半数に迫る議席を得られるかは微妙とみられていたのである。しかし同党は約36%を得票した。第1党に与えられる「ボーナス議席」の50議席を加えて149議席(定数300)を得る見通しとなったのである。
 ギリシャでは現与党が今まで進めてきた「国民に痛みを強いる改革」により14年の経済成長率が7年ぶりにプラスに転じる見通しとなった。しかし、昨年秋の失業率が25.7%と依然として高水準であり、耐乏生活への国民の不満は大きいのが現状である。与党がEU主導の緊縮策継続を主張しているのを尻目にしながら、急進左派連合は賃上げなど緊縮策の破棄を訴えて支持を広げてきた。
 英紙によると、今回の選挙は「軍事独裁から民主制復帰を果たした1974年以来、最も重要」として注目されたけれども、結果は「欧州民主主義国で戦後最も左派的な政権」の誕生に終わったのである。
 欧州にはギリシャ経済の惨状が大恐慌期の米国に匹敵するとした上において「その違いはギリシャに回復の兆しがないことである」との悲観論すらある現状である。
 ギリシャ債務危機により、ユーロ圏全体に信用不安が広がっている現状がある。後遺症は癒えるどころか、スペイン、ポルトガルなど南欧諸国が経済不振に陥っていて、今後のギリシャ経済運営は極めて重要だと言える。
  金融上の「安全網」の強化によって、仮にギリシャがユーロを離脱したという場合でも、影響は「制御可能」だとの見方があるのは事実である。しかし、次期政権がEUに債務削減を求めるとするならば、ほかの欧州諸国も政治的に緊縮財政の維持が困難になる可能性がある。ギリシャ金融支援を主導してきたドイツ政府に対しても、自国内で不満が高まることが必至であると言える。
 バトル海沿岸のリトアニアで15年の元日に、ユーロの流通が始まって、99年に11カ国で発足したばかりである。ユーロを象徴とする欧州統合は一層進んだかにみえるが、欧州各国では不安が高まっているのが現状である。
 ユーロ圏外の英国も5月に総選挙を控えている。EU離脱を唱える英独立党が、欧州統合に懐疑的な世論の受け皿として勢いづいている。冷戦終結以来、欧州の安定に大きく貢献してきたEUが結束を維持できるかどうか日本も目を離すことはできないと言えるだろう。






人質殺害映像 [国外]

 週末の深夜に、その映像はインターネット上に投稿されたばかりである。過激派「イスラム国」とみられているグループに拘束されたジャーナリスト後藤健二さんが、地面に横たわっている人物の写真を手にして写っており『湯川さんが殺害された」と英語の音声が流れたのである。安倍晋三首相は「許し難い暴挙」と非難して「直ちに解放するように強く要求する」との見解を述べた。
 この映像には過去の人質映像に合ったイスラム国のメディア部門のロゴがなく、更に投稿者の素性も明らかにはなっていないが、内容から信憑性は高いとみられているのである。後藤さんが声明を読まされている様子で「彼ら(犯行グループ)はもはや金を求めていない」と、自爆テロ事件でヨルダン当局に拘束されている女性死刑囚の釈放を要求しているとのことである。
 人質殺害予告と2億㌦身代金要求で設定された「72時間以内」の期限から1日が経って、事件は急展開したのである。これまでに政府は欧米や中東の各国に協力を求めて、情報収集を急ぐとともに早期解放に向けてグル―プとの交渉の糸口を探ってきたけれども、現時点では安否の確認には至っていないのである。そうした中、要求が身代金から死刑囚釈放に変わって、さらに難しい対応を迫られそうな予感がする。
 虐殺で道理が通じない集団であるのは言うまでもない。家族らの心中を考えると、どんなに非難の言葉を連ねても足りないと言わざるを得ない。時間との闘いは厳しさを増すが、政府はあらゆる手段を駆使して一刻も早く解放交渉への道を切り開いてほしいと願って止まない。
 殺害予告以来、政府は中東有数の情報機関を持つヨルダンのほかに、イスラム国との「捕虜交換」で総領事ら49人の救出に成功したトルコなどに協力を要請したのである。更に、米英両国から情報提供を受けて、シリア地域の部族やイスラム教指導者にも働き掛けて、犯行グル―プとの交渉ルートを探ってきたのである。しかし後藤さんらの安否を確認できていない。グループと接触できないという厳しい状況は変わっていないという現状である。
 イスラム国はイラクやシリアで急速に勢力を拡大した。支配地域の油田からの原油密売で豊富な資金を持ち、ネット欧米にいるイスラム系の若者に参加を呼び掛けていることでも知られている。さらに身代金要求などに応じなかった米英のジャーナリストらの殺害映像を公開するなどして国際社会の大きな脅威になっているのが事実である。
 交渉は容易ではないのは確かである。しかも、釈放要求によって事態は一層複雑になったと言える。「人命第一」と「テロに屈しない」という二つの大原則の下で難しい判断が続くことになりそうだけれども、何とか突破口を見いだしてほしいと思う。
 中東では、この10年ほどの間に日本人の旅行者、ジャーナリストたちが相次いで拉致や殺害の標的になってきた。そして今回、過激派の矛先ははっきりと「日本政府と国民」に向けられたのである。これから紛争地域の情勢や過激派に関する情報収集の強化と在外邦人の安全確保が喫緊の課題となることは言うまでもない。







欧州の量的緩和 [国外]

 欧州中央銀行(ECB)が、国債などを大量に購入することによって金融市場へお金を流し込む「量的金融緩和の導入」を決めた。景気の足取りが弱い上に、更に物価が下がり続けるデフレへ陥る恐れがあるからだと説明している。今年3月から始めて当面2016年9月まで続ける予定ということである。
 量的緩和はこれまでに米英や日本が先行していて、これにユーロ圏も続くことになったのである。ECBは昨年6月と9月の2回利下げに踏み切ったほかに、銀行の企業向け融資を支援する資金供給などを実施してきたけれども、景気押し上げの効果が芳しくなかったにである。
 しかしながら、追加緩和で直ぐに問題が解決するというものでもない。ユーロ圏の景気低迷は一部加盟国の構造改革の遅れに加えて、対ロシア関係の悪化などが重なったためであり、最近の物価低迷は原油価格の急落によるものである。ユーロ安による輸出伸長は多少あるとはいえるだろうが、量的緩和の経済全体への効果は限定的とみた方が適切だと思う。
 「欧州の盟主」ドイツは同様の認識から、量的緩和はかえって改革機運をそぐとして反対してきたのである。この亀裂を修復し、今後も域内の政策調和を保つことが大切でもある。
 ユーロ圏経済の大きな課題は、依然としてフランスやイタリアの構造改革にあると言ってよいであろう。ユーロ加盟条件である財政赤字の削減が後手に回って政策手段に制約がある上に、民間活力を増す労働市場などが進んでいないからである。金融政策の効果を高めるためにも改革を怠らないでもらいたいと思う。
 08年秋のリーマン・ショックに象徴される金融危機から6年余り経った。米国経済が成長軌道に戻り昨年秋で量的緩和を終えたのと対照的に、欧州の不振があらためて浮き彫りになっている現状である。国際通貨基金(IMF)は今月、ユーロ圏の15年の成長見通しを1.2ポイント引き下げたばかりである。
 昨年半ば以降、伸び悩みが特に目立つのが輸出である。中国向けが同国の成長鈍化で振るわないところへ、ウクライナ危機をめぐる制裁措置により対ロ貿易の縮小が重なったことが響いている訳である。ウクライナ問題におけるロシアの強硬姿勢に変化は依然としてなく、制裁緩和の見通しは立っていない減所である。
 量的緩和の景気効果は限定的と見込まれるものの、金利や外国為替相場を通じた影響は日本をはじめ世界へ及ぶ可能性もあって注意が必要である。景気回復で利上げを検討中の米国と金融政策の方向が逆になるためで、ユーロ下落の一方、円高が進む局面も出てくると言える。
 ここで釘を刺しておきたいのは、円が上昇したからと日銀も追加の金融緩和をすることである。日銀は昨年10月に脱デフレを確実にするとして突如、追加緩和を決めたけれども、その後の原油安で「2年で物価上昇2%」の目標達成はほぼ絶望的な状態である。頼みの綱は円安による輸出物価の上昇だけと言っていい状況であるからだ。だが今以上の円安は弊害が大き過ぎる。「通貨安競争」をすべきでないのである。






イスラム国邦人殺害警告 [国外]

 過激派の「イスラム国」とみられるグループが、72時間以内に身代金2億㌦(約235億円)を支払わなければ「拘束している日本人2人を殺害する」と警告するビデオ声明をインターネット上で発表したのは誰でも知るところである。絶対に許し難いテロ行為であるのは言うまでもない。日本政府は2人が速やかに解放されるように全力を挙げて手を尽くしてほしいと願う。
 イスラム国は政情不安が続いている「イラク」と4年前から内戦の渦にある「シリア」の『両国』で昨年夏から勢力を伸ばしてきたのである。
 自分たちに都合の良いイスラムの教義を振りかざして、穏健派信徒や少数民族の迫害を続けている一方で、米英の記者らを処刑する残酷な映像をネットで公開してきたという経緯がある。シリアから国外に逃れた難民は昨年末には約330万人となっており大きな人道問題となっている。
 今月16日から中東4カ国・地域を歴訪した安倍晋三首相は、2億㌦の「イスラム国対策」を表明したばかりである。その柱はインフラ建設や難民への医療、食糧支援など人道援助であった訳だが、ビデオ声明は「日本は8500㌔も離れていながら進んで十字軍に参加した」と非難したのである。全くの的外れも甚だしい。首相の訪問により国内で高まる中東への関心を逆手に取った憎むべき行為である。
 安倍首相は記者会見で、「許し難いテロ行為だ.危害を加えず、直ちに解放するよう強く要求する」と非難した上ぬおいて「人命第一に対応する」と述べたのは記憶に新しい。外国人記者からは、身代金についての質問が飛んだけれども、首相は「国際社会はテロに屈してはならない」と一貫して強調した。
 中東では一昨年1月に、アルジェリアの天然ガス生産関連施設で、イスラム武装勢力の人質に取られた邦人のうち10人が死亡する事件があったばかりである。
 邦人が人質となる事件の「再発を防ぐ」ためには、官民が協力して海外での危機管理意識を高める必要があると言ってよい。時間がかかっても、在外公館の情報収集能力の強化、中東情勢やイスラムのさまざまな側面に精通する専門家の育成にも力を注いでいきたい。
 イスラム国については昨年9月に、米軍が開始したシリア国内の拠点空爆にサウジアラビアなど周辺アラブ諸国が参加するなど、地域を挙げた掃討作戦が展開されたのは記憶に新しい。国連安全保障理事会でも、外国人戦闘員の渡航を禁止する決議が採択されたけれども、イスラム国打倒に向けての国際的包囲網構築への道は険しいのが現実である。2017年初めまでのオバマ米大統領の任期中の壊滅は「困難」と見られていて、日本を含む国際社会は腰を据えて取り組むことを求められているのである。
 フランス週刊紙銃撃事件以降、イスラムに対する世界の目は厳しくなっている。安倍首相は会見で「イスラムの教えと過激主義とは全く別のものだ」と強調した。過激派の非人道な脅しは許せないが、地道に社会建設に努める「イスラム諸国の人々」との関係を深めることはこれからも重要であるのは言うまでもない。




労働時間規制緩和 [労働時間]

 厚生労働省は、働いた時間ではなく「成果」で賃金を決める新制度の骨格をまとめたところである。年収や職種を限定して、労働時間の規制を外す仕組みだけれども「残業代ゼロ」の働き方が拡大する懸念が否定できないと危惧する。それ以前に、長時間労働の抑制が進んでいないのが問題であることは忘れてはいけない。
 厚労省は新制度を「高度プロフェッショナル労働制」と名付けたのである。労働政策審議会の分科会に提示した労働時間の規制緩和の骨子案によるならば、新制度の対象は年収1075万円以上で、金融商品のディーリングや研究開発など高度の専門職に限るとしている。対象者の同意を前提として「業務の範囲を明確」に定めた書面を経営側と交わすのである。
 労働基準法によれば、労働者が1日8時間・週40時間を超えて働いたり、深夜・休日勤務をしたりした場合には、割増賃金の支払いを企業に義務付けているけれども、新制度において働く人にはこの規制が適用されないのである。「ホワイトカラー・エグゼンプション」とも呼ばれている。
 政府は新制度の導入を盛り込んだ労基法改正案を26日に召集される通常国会に提出する方針ではあるが、「労働側」は対象となる人が過重な働き方を強いられるなどとして強く反発しているのである。当面、労使間、与野党間の綱引きが続きそうな状態である。
 新制度は安倍政権が進める雇用改革の柱である。骨子案では、時間に縛られず自由な働き方をしたい人のニーズに応えるのが狙いであり、労働生産の向上が図れるとしている訳である。
 新制度の理念は理解できないというわけではない。確かに短い時間で成果を挙げられる人には便利な制度と言えるかもしれない。うまく運用されれば働き過ぎを防げるという見方もあるかもしれない。しかし、長時間労働による「過労死」が発生して、「残業代が横行」している現状を見るならば、そう楽観的ではいられない。
 骨子案によると、企業側に労働者の健康を確保するための措置を義務付けて、年104日間以上の休日を与えることなどを求めているが、やや具体性に乏しく、更にどこまで実効性があるかは疑問と言える。
 最も懸念されているのが、新制度の対象が拡大されることである。年収の要件は「1075万円以上」としているけれども、第1次安倍政権で同様の制度が提案された際には、経団連は「400万円以上」とするよう求めたのである。
 分科会でも、経営側委員が「1千万円以上」に引き下げるよう主張して、労働側委員が「年収要件に合理的な根拠はない。すでに値切り交渉のようだ」と反論する場面があったのである。新制度が導入されたら年収要件を引き下げたいのが、経営側の本音をみられても仕方がないと言ってよいであろう。
 雇用・労働の規制緩和では、順番が重要であることは言うまでもない。新制度の議論は、長時間労働の抑制などを先行させて、十分な成果が挙がってからにするべきであろう。今の進め方では、働く人の納得は得られないのではないかと思われるのである。





民主党新代表 [政治]

 民主党の新代表が決選投票の末に岡田克也氏に決まって、2012年末の政権転落以降、長期低迷状態から脱しきれない党の「再建・再生」は再登板の岡田氏に委ねられることになったのである。
 民主党の最大の病巣ははっきりしていると言えるだろう。与党になっても、野党であっても、党内が「一番岩になれない」点である。「寄り合い所帯」と揶揄されるように、有権者にもバラバラの党に映っていて、「党勢が回復しない」・「選挙の候補者を発掘できない」のも当然だといえるだろう。
 再生への「第一歩」は今回の代表選において3人の候補者が異口同音に訴えたように民主党の「文化」を根本的に変えるところから始まると言えるだろう。プロセスでは大激論を繰り広げたとしても、決まれば従うという当たり前の「ガバナンス」つまり「党の一体感」を構築できなければ政権奪還の道は遠いと言える。
 代表選の「しこり」を残してしまうならば、これまでの民主党と同じである。岡田新代表は今回の代表選に立候補した細野豪志氏・長妻昭氏と、その支持グループの声にも「謙虚に耳を傾ける」・「両氏は新代表の党運営に協力していく」それを実践することを肝に銘じてほしいと願う。
 代表選においては、維新の党などとの野党再選に積極的な姿勢を示してきた細野氏が立候補して「再編」か「自主再建」かが争点になるとみられていたけれども、細野氏が持論を封印したことによって路線問題の論議は盛り上がらなかったのである。しかし党内には依然として「再編論」がくすぶっていると見てよいであろう。
 まず必要なことは、民主党が「自らの足元」をしっかりと見つめて固め直すことである。党に未来がないと離合集散していても有権者には「選挙目当て」と見透かされるだけである。自身の改革なくしては、再編にすがって生き残るのは幻想と言っても過言ではないであろう。
 昨年末の衆院選が52%と戦後最低の投票率に終わった責任は、民主党にもあると言ってよい。政権選択という貴重な機会を与えられながらも、政権を担いうる候補者を擁立できなかったことである。アベノミクスを前面に「この道しかない」と訴えた安倍晋三首相に対し、批判はしても明確な「別の道」を提示できなかったのである。この二つの〝怠慢〟が原因の一つだと、民主党も認識しているはずである。
 ならばやるべきことは明らかであろう。岡田氏は代表選の政見で「温かみのある公正な社会」の実現を掲げて、経済・世代・地域・企業間の格差を小さくし、分厚い中間層を作る、などと訴えた。これらを具体的に肉付けしていけば、アベノミクスと明確な対立軸になるはずである。
 日本の政治は、自民党1強、安倍1強体制がより強まったと言える。「安倍政治」を監視し「熟議の国会」を取り戻すためには、強い「野党の存在」が欠かせないのは言うまでない。民主党は「野党の軸」という自覚を持って、政策を磨き、地方議員まで「一丸」となり、地べたを這うように訴えていかなければいけないと考えるのである。




アラブの春から4年 [国外]

 市民による非暴力デモがチュニジアの独裁政権を倒して中東の民主化運動『アラブの春」が始まってから4年が経過している。改革への期待はアラブ全域に広がったけれども「エジプト」では軍主導政権が復活して「シリア」では出口の見えない内戦が続いているなど、混乱収束の見通し立っいない。当時の理念に立ち返って,軍部でも宗教勢力でもない「穏健な世俗勢力」が主導する国家建設を期待したいものである。
 安倍晋三首相は「エジプト・ヨルダン・イスラエル・パレスチナ」の中東4カ国・地域を歴訪した。過激派「イスラム国」への対処を始めとして経済交流の活性化、停滞する中東和平の側面支援などの課題に取り組み、地域安定に向けて貢献できるような首脳外交を深めてほしいと願っていた。
 2014年は中東にとって厳しい年だったと言える。英紙によると、自爆テロ、銃撃、空爆などで10万人以上が殺害されて「その3分の1」は民間人だったのである。1年の犠牲者の数として歴史的にも最悪水準だった。
 パリの週刊紙本社銃撃事件においては、アラビア半島南端のイエメンに拠点を置く国際テロ組織アルカイダ系武装組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」が犯行声明を発表した。
 イエメンでは、長年独裁を敷いた大統領が退陣した後に武装勢力の活動で治安が悪化して「テロの温床」となった経緯がある。パリの銃撃事件と同じ今月7日には、警察学校を狙った自爆テロがあって30人が死亡した。先月も25人以上が死亡する自爆テロが2度も発生するなど「アラブの春の後遺症」が癒えないという現状である。
 4年前の「民主化運動」は、エジプトのムバラク元大統領を退陣に追い込んだ瞬間に最高潮に達したのであるが、その後、歴史の歯車は逆転してムスリム同胞団の支持で当選したモルシ前大統領を軍が打倒した。同胞団をテロ組織に指定した上で武力で弾圧したのである。
 昨年夏には国防相だったシシ現大統領が就任した。年末にはデモ隊への発砲を黙認したとして殺人罪で起訴されたムバラク氏に事実上の無罪判決が出る一方で、警察殺害などに関与したとして、同胞団支持者ら188人に死刑が宣告されたのは記憶に新しい。ムバラク旧政権以上に、軍主導の強権体制が復活したと言える。
 反政府蜂起でガダフィ大佐が殺害されたリビアでも混乱が続く一方で、シリアではイスラム国の台頭もあって内戦終結の糸口さえ見えない現状がある。内戦の死者は昨年だけで7万6千人と推定されている。ヨルダンなど国外に逃れた難民は約330万人に達して『過去20年間で最悪」の人道危機と化したのである。
 パリでの銃撃事件直後の「中東歴訪」は安倍首相の地球儀俯瞰外交の中でも、極めて大きな意味を持つといえるだろう。歴訪先では日本が掲げてきた「人間の安全保障」に基づいて、地道な平和構築支援が求められているのである。経済協力を強調するだけではなくて、多様な主義主張に対して寛容であることの大切さを力説することが重要だと言える。





タグ:アラブの春

特定秘密保護法 [特定秘密保護法]

  特定秘密保護法が昨年「施行された」のは記憶に新しい。一昨年12月の成立以来、各地で「集会」や「デモ」が繰り返され「さまざまな人たち」が反対や疑問の声を上げてきたという事実がある。しかし、政府がこのことにしっかりと向き合う姿勢を示したと言えるのであろうか。国民の「知る権利」や、それを支える「報道・取材の自由」、さらには特定秘密を扱う公務員らの適正評価などをめぐり『多くの懸念が残されたまま』になっていると言えるのではないだろうか。
  秘密保護法と運用基準などから成る「新たな秘密保全」の仕組みの下では、政府と行政機関が重要な情報を一手に握ることになる。公務員らには「漏えい罪」で、秘密をあばこうとする報道や市民運動らには「不正取得罪」でにらみを利かせつつ(いずれも最高10年の懲役)、国会や裁判所のチェックを拒むこともできるであろう。
  恣意的な運用に対する「歯止め」がきちんと確保されているとは言うことはできず、役所は都合の悪い情報を隠すかもしれないという「不安」がある。あるいは、特定秘密とは関係ない情報であっても「出し渋る」ことになることも想定される。そのような事態にならないためには、知る権利を前面に据えて粘り強く運用基準などの問題点の指摘を重ねていくしかないと言うべきだろう。
  法施行とともに動きだす秘密保全の仕組みは「二重三重」に守りを固めているのである。秘密を扱う公務員が秘密を洩らせば、その相手がスパイか報道機関、市民団体かにかかわらずー厳罰で臨むということである。過失による漏えいであっても厳しく罰するのである。さらに運用基準は「秘密取得者の責務」として、漏えいの働き掛けがあったら、上司らに報告するよう定めているというのである。
 働き掛けは、報道機関の取材や市民団体の調査も含むとみられている。また公務員は疑似秘密に基づき行政機関の窓口などに内部通報できるとしているが、その際に特定秘密の内容を伝えることは許されないで、その内容を「要約」するよう求められるのである。だが肝心の「要約の基準」は明示されていない。要約に失敗すれば、漏えい罪に問われる可能性がある訳である。「余計なことはするな」と言っているに等しいのではないだろうか。
 「情報のかけらも漏らすまい」ということだろうが、何が「特定秘密」かという肝心な点はあいまいなままで、国民が知るべき「情報」や隠蔽目的で秘密指定された「情報」までも囲い込まれてしまう恐れがあるといえるであろう。
 少なくとも「隠蔽目的の秘密指定の禁止」や公益目的の「内部告発」の保護は、法律のなかに盛り込んでもらいたいものである。さまざまな不備が指摘されている「情報公開制度」を、早急に手直しすることも求められているだろう。「防衛」・「外交」・「スパイ防止」・「テロ防止」の4分野で秘密にしないといけない情報があることは理解はできる。ただ近い将来『必ず公開される道筋』は確保されていなければならないのは言うまでもない。
 「個人情報の保護」を含め、「運用」を注意深く見守っていく必要があるといえるだろう。





振込時間延長 [振込時間延長]

 銀行の振込時間が「延長」されることとなった。全国銀行協会(全銀協)が、お金の振り込みに24時間・365日対応できる「新システムの導入」を決めたからである。2018年中の開始を目指しているというのである。利用者が増えているインターネット通信販売などの使い勝手がより良くなると見込まれて「銀行業界の対応」を歓迎したいと思う。
 ただし、新システムの構築と維持には多額の費用がかかるという見通しなのである。また振り込みに対応する「時間が延びる」ということで、不正送金など「犯罪に悪用されるリスクも高まる可能性がある」といえるだろう。利用者の立場からすればサービスが拡充されたと言っても、そのコスト分の負担が大きくなるというのであればメリットを感じにくいと言わざる得ない。新システムに伴い不正送金などが増えるならば、制度全体の信用にかかわるのは言うまでもない。銀行業界としては、新システムの目的である利便性向上を損なわないよう個人や企業の負担を抑えた「安全な制度の構築」に努めてほしいと願う。
 現在あるシステムの稼働時間は原則「平日午前8時半から午後3時半まで」である。他の金融機関へ「当日中に振り込む」には午後3時までに手続きを終える必要があるのであり、これを過ぎると入金は翌営業日になるのである。例えば、金曜日の午後4時に現金自動預払機(ATM)などから振り込んだとしても相手の口座に届くのは土日を挟んで月曜日になるということである。
 全銀協は今回の件について「24時間・365日対応できる新システム」を整備する一方で、「実際に何時まで時間を延長するか」は各金融機関の判断に任せるというのである。今ある地方銀行64行は少なくとも平日午後6時まで延ばす方針だというのである。
 このため資金力がありシステム要員を擁立する「大手行」がより遅い時間や土日祝日へ延長するものと予想されるが、一方「小規模」な金融機関の中には時間延長に応じないところも出てくる可能性もあると言えるであろう。金融機関の対応の違いが利用者の混乱につながらないよう、全銀協には先頭に立って「周知」や「広報」、業界内での「指導」に力を入れてもらいたいと思う。
 銀行振り込みの時間が延長されることによって、送金や代金決済をめぐる各種サービス間の『競争』が激しくなることが見込まれると考えてよいであろう。クレジットカードにとどまらず、ネット通販のための決済サービス業者や仮想通貨による支払が近年急速に支持を広げているからである。その大きな特徴としては、利用手数料が「無料」または「極めて安い」という点である。
 米国が発祥で日本でも利用できるネット決済サービス「ペイパル」は口座の開設・維持だけでなく買い物代金の支払手数料が「無料」である。仮想通貨「ビットコイン」は昨年2月に取引所が破綻したことで不安視されたけれども、送金にかかる「費用の安さ」から利用が増えているというのが現状である。このような変化を前にすると預金金利がほぼゼロな一方で銀行の振込手数料が原則数百円もかかることが「妥当であるのか」との声も出てくるだろう。今回の制度拡充を機に「利用を増やす」ためにも、「料金の引き下げ」や「無料対象の拡大」を検討する余地が金融界にはあるのではないだろうかと思う。




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